ビルドを設定する

Android ビルドシステムは、アプリリソースとソースコードをコンパイルして、テスト、デプロイ、署名、配布が可能な APK または Android App Bundle にパッケージ化します。

Gradle ビルドの概要Android ビルドの構造では、ビルドのコンセプトと Android アプリの構造について説明しました。ここでは、ビルドを構成します。

Android ビルドの用語集

Gradle と Android Gradle プラグインを使用すると、以下のビルド要素を構成できます。

ビルドタイプ

ビルドタイプは、アプリをビルドしてパッケージ化する際に Gradle が使用する特定のプロパティを定義するものです。一般的に、ビルドタイプは開発ライフサイクルの各段階に応じて構成されます。

たとえば、debug ビルドタイプの場合は、デバッグ オプションが有効化され、デバッグキーを使用してアプリに署名します。release ビルドタイプの場合は、圧縮と難読化が行われ、配布するためにリリースキーを使用してアプリに署名します。

アプリをビルドするには、少なくとも 1 つのビルドタイプを定義する必要があります。Android Studio は、デフォルトで debug ビルドタイプと release ビルドタイプを作成します。アプリのパッケージ設定のカスタマイズを開始する場合は、ビルドタイプの設定をご覧ください。

プロダクト フレーバー
プロダクト フレーバーは、アプリの無料版や有料版など、ユーザーにリリースできるさまざまなアプリ バージョンを示します。プロダクト フレーバーをカスタマイズすることで、さまざまなコードとリソースを使用しつつ、すべてのアプリ バージョンに共通する部分を共有し、再利用できます。プロダクト フレーバーはオプションであり、手動で作成する必要があります。さまざまなアプリ バージョンの作成を開始する場合は、プロダクト フレーバーの設定をご覧ください。
ビルド バリアント
ビルド バリアントは、ビルドタイプとプロダクト フレーバーを組み合わせたものです。Gradle はこの構成を使用してアプリをビルドします。ビルド バリアントを使用すると、開発時にプロダクト フレーバーのデバッグ バージョンをビルドし、配布時にプロダクト フレーバーの署名付きリリース バージョンをビルドできます。ビルド バリアントは直接構成するものではなく、ビルド バリアントを形成するビルドタイプとプロダクト フレーバーを構成します。追加のビルドタイプまたはプロダクト フレーバーを作成すると、それに応じてビルド バリアントも追加作成されます。ビルド バリアントを作成、管理する方法については、ビルド バリアントを設定するをご覧ください。
マニフェスト エントリ
ビルド バリアント構成内で、マニフェスト ファイルの一部のプロパティ値を指定できます。このビルド値は、マニフェスト ファイル内の既存の値をオーバーライドします。これは、異なるアプリ名、最小 SDK バージョン、ターゲット SDK バージョンを使用してアプリの複数のバリアントを生成する場合に役立ちます。複数のマニフェストが存在する場合、マニフェスト マージツールがマニフェスト設定をマージします。
依存関係
ビルドシステムは、ローカル ファイル システムやリモート リポジトリのプロジェクト依存関係を管理します。つまり、依存関係のバイナリ パッケージを手動で検索してダウンロードしたり、プロジェクト ディレクトリにコピーしたりする必要はありません。詳細については、ビルド依存関係を追加するをご覧ください。
署名
ビルドシステムを使用すると、ビルド構成で署名設定を指定して、ビルドプロセス中に自動的にアプリに署名できます。デバッグ バージョンの場合、ビルドシステムは、既知の認証情報を使用してデフォルトのキーと証明書で署名を行い、ビルド時にパスワード プロンプトが表示されないようにします。リリース バージョンの場合、対象ビルドの署名設定を明示的に定義していない限り、署名は行いません。リリースキーがない場合は、アプリに署名するに記載されているとおり、リリースキーを生成できます。署名付きリリースビルドは、ほとんどのアプリストアでアプリを配布するために必要です。
コードとリソースの圧縮
ビルドシステムを使用すると、ビルド バリアントごとに異なる ProGuard ルールファイルを指定できます。アプリをビルドする際、ビルドシステムは適切なルールセットを適用し、R8 などの組み込みの圧縮ツールを使用してコードとリソースを圧縮します。コードとリソースを圧縮すると、APK や AAB のサイズを縮小できます。
複数 APK のサポート
ビルドシステムを使用すると、特定の画面密度またはアプリケーション バイナリ インターフェース(ABI)に必要なコードとリソースのみを含む、さまざまな APK を自動的にビルドできます。詳細については、複数の APK をビルドするをご覧ください。ただし、単一の AAB をリリースすることをおすすめします。このアプローチでは、画面密度と ABI に加えて言語でも分割でき、Google Play に複数のアーティファクトをアップロードせずに済みます。2021 年 8 月以降に送信された新しいアプリはすべて、AAB を使用する必要があります。

Android ビルドの Java バージョン

ソースコードが Java、Kotlin、またはその両方で記述されている場合、ビルドの JDK または Java 言語のバージョンを選択する必要がある場所がいくつかあります。詳しくは、Android ビルドの Java バージョンをご覧ください。

ビルド構成ファイル

カスタムビルド構成を作成するには、1 つ以上のビルド構成ファイルに変更を加える必要があります。これらの書式なしテキスト ファイルは、ドメイン固有言語(DSL)を使用して、Kotlin 言語のフレーバーである Kotlin スクリプトでビルドロジックを記述し、処理します。Java 仮想マシン(JVM)用の動的言語である Groovy を使用してビルドを構成することもできます。

Android Gradle プラグインには必要な DSL 要素のほとんどが導入されているため、ビルドの構成を開始する際、Kotlin スクリプトや Groovy に関する知識は必要ありません。Android Gradle プラグインの DSL の詳細については、DSL リファレンス ドキュメントをご覧ください。Kotlin スクリプトは、基盤となる Gradle Kotlin DSL にも依存します。

新しいプロジェクトを開始すると、Android Studio はこれらのファイルの一部を自動的に作成し、適切なデフォルト値に基づいてファイルを設定します。作成されたファイルの概要については、Android ビルド構造をご覧ください。

Gradle ラッパー ファイル

Gradle ラッパー(gradlew)は、Gradle 自体をダウンロードして起動する、ソースコードに含まれている小さなアプリケーションです。これにより、ビルド実行の整合性が高まります。デベロッパーはアプリケーション ソースをダウンロードして gradlew を実行します。これにより、必要な Gradle ディストリビューションがダウンロードされ、Gradle が起動してアプリケーションがビルドされます。

gradle/wrapper/gradle-wrapper.properties ファイルには、ビルドの実行に使用される Gradle のバージョンを記述するプロパティ distributionUrl が含まれています。

distributionBase=GRADLE_USER_HOME
distributionPath=wrapper/dists
distributionUrl=https\://services.gradle.org/distributions/gradle-8.0-bin.zip
zipStoreBase=GRADLE_USER_HOME
zipStorePath=wrapper/dists

Gradle 設定ファイル

settings.gradle.kts ファイル(Kotlin DSL の場合)または settings.gradle ファイル(Groovy DSL の場合)は、ルート プロジェクト ディレクトリにあります。この設定ファイルは、プロジェクト レベルのリポジトリ設定を定義し、アプリのビルド時に含めるモジュールを Gradle に伝えます。マルチモジュール プロジェクトでは、最終的なビルドに含める各モジュールを指定する必要があります。

ほとんどのプロジェクトで、このファイルはデフォルトで次のようになります。

Kotlin

pluginManagement {

    /**
      * The pluginManagement.repositories block configures the
      * repositories Gradle uses to search or download the Gradle plugins and
      * their transitive dependencies. Gradle pre-configures support for remote
      * repositories such as JCenter, Maven Central, and Ivy. You can also use
      * local repositories or define your own remote repositories. Here we
      * define the Gradle Plugin Portal, Google's Maven repository,
      * and the Maven Central Repository as the repositories Gradle should use to look for its
      * dependencies.
      */

    repositories {
        gradlePluginPortal()
        google()
        mavenCentral()
    }
}
dependencyResolutionManagement {

    /**
      * The dependencyResolutionManagement.repositories
      * block is where you configure the repositories and dependencies used by
      * all modules in your project, such as libraries that you are using to
      * create your application. However, you should configure module-specific
      * dependencies in each module-level build.gradle file. For new projects,
      * Android Studio includes Google's Maven repository and the Maven Central
      * Repository by default, but it does not configure any dependencies (unless
      * you select a template that requires some).
      */

  repositoriesMode.set(RepositoriesMode.FAIL_ON_PROJECT_REPOS)
  repositories {
      google()
      mavenCentral()
  }
}
rootProject.name = "My Application"
include(":app")

Groovy

pluginManagement {

    /**
      * The pluginManagement.repositories block configures the
      * repositories Gradle uses to search or download the Gradle plugins and
      * their transitive dependencies. Gradle pre-configures support for remote
      * repositories such as JCenter, Maven Central, and Ivy. You can also use
      * local repositories or define your own remote repositories. Here we
      * define the Gradle Plugin Portal, Google's Maven repository,
      * and the Maven Central Repository as the repositories Gradle should use to look for its
      * dependencies.
      */

    repositories {
        gradlePluginPortal()
        google()
        mavenCentral()
    }
}
dependencyResolutionManagement {

    /**
      * The dependencyResolutionManagement.repositories
      * block is where you configure the repositories and dependencies used by
      * all modules in your project, such as libraries that you are using to
      * create your application. However, you should configure module-specific
      * dependencies in each module-level build.gradle file. For new projects,
      * Android Studio includes Google's Maven repository and the Maven Central
      * Repository by default, but it does not configure any dependencies (unless
      * you select a template that requires some).
      */

    repositoriesMode.set(RepositoriesMode.FAIL_ON_PROJECT_REPOS)
    repositories {
        google()
        mavenCentral()
    }
}
rootProject.name = "My Application"
include ':app'

トップレベル ビルドファイル

トップレベルの build.gradle.kts ファイル(Kotlin DSL の場合)または build.gradle ファイル(Groovy DSL の場合)は、ルート プロジェクト ディレクトリにあります。通常、プロジェクト内のモジュールで使用されるプラグインの一般的なバージョンを定義します。

次のコードサンプルは、新しいプロジェクトを作成した後の、トップレベルのビルド スクリプトのデフォルト設定と DSL 要素を示しています。

Kotlin

plugins {

    /**
     * Use `apply false` in the top-level build.gradle file to add a Gradle
     * plugin as a build dependency but not apply it to the current (root)
     * project. Don't use `apply false` in sub-projects. For more information,
     * see Applying external plugins with same version to subprojects.
     */

    id("com.android.application") version "8.7.0" apply false
    id("com.android.library") version "8.7.0" apply false
    id("org.jetbrains.kotlin.android") version "2.0.20" apply false
}

Groovy

plugins {

    /**
     * Use `apply false` in the top-level build.gradle file to add a Gradle
     * plugin as a build dependency but not apply it to the current (root)
     * project. Don't use `apply false` in sub-projects. For more information,
     * see Applying external plugins with same version to subprojects.
     */

    id 'com.android.application' version '8.7.0' apply false
    id 'com.android.library' version '8.7.0' apply false
    id 'org.jetbrains.kotlin.android' version '2.0.20' apply false
}